最近アクティブなシニアが増えてきました。

 

 

テレビ番組でも食事、運動、転倒予防、などに関するものがたくさんあります。

 

 

そうしたものをみてみると

 

  • ロコモ(ロコモティブシンドローム)体操で健康維持
  • サルコペニア予防にはこれが効く
  • フレイルの予防にはこの運動が有効

 

 

などといった表現が並んでいることに気が付きます。

 

 

ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイル、、、、、

 

 

健康に人一倍敏感で、高齢者の指導をすることも多いであろうこのサイトにたどり着いた読者の皆さんは

 

 

これらの言葉を使った事が恐らくあるかもしれません。

 

 

しかし、この三つの違いをちゃんと理解している人はあまり多くはないのではないでしょうか?

 

 

今まで漠然と使用していた方も多いと思います。

 

 

今日はこれら三つの理解を深めていきましょう。

 

 

三つともに似たような概念を異なる視点からみています。

 

 

違いを理解することで、より適切な指導が出来るようになると思います。

 

 

ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイル、ともにすべて医学用語のため、

 

 

言葉の定義が一応あります。むつかしい表現も中にはあるかもしれませんが、

 

 

定義なので仕方ないと思ってください。また概念自体がまだ定まっていない中で統一された定義がないものもあります。

 

 

ではまずロコモティブシンドロームから行きましょう。

 

 

【ロコモティブシンドローム】

 

定義:

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害による移動機能の低下した状態。

和文は「運動器症候群」(*1日本整形外科学会HPより一部抜粋)

 

 

かなり包括的な概念で、運動器の障害によって日常生活に制限をきたし,

 

 

介護・介助が必要な状態になっていたり、そうなるリスクが高くなっていたりする状態を示しています。

 

 

例えば、杖をついて歩いているご老人は皆ロコモティブシンドロームです。

 

 

さらに杖をついていなくても、階段の上り下りでひざに痛みを覚える方々や、

 

 

ちょっとの階段ですぐに疲れてしまうためすぐにエレベーターやエスカレーターを使用してしまう方々も

 

 

ロコモティブシンドロームです。

 

更に詳しく知りたい方は日本整形外科学会が発表しているリーフレットを参照してみてください。

(日本整形外科学会HPよりリンク持ってきています。*2)

 

 

整形外科学会の切り口として、運動器に主に注目した概念ですね。

 

 

次にサルコペニアに行きましょう。

 

 

【サルコペニア定義】

サルコペニアとは、加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋・体幹筋など全身の「筋力低下が起こること」を指します。(*3)

 

 

ギリシャ語で「肉」を意味する「sarx(サルコ)」と「喪失」を意味する「penia(ペニア)」からなる造語です。

 

 

1989年にRosenbergによって提唱された概念です(*3)。

 

 

当初は筋肉量の減少に注目されていましたが、徐々に筋機能の低下(質の低下)も含めた概念へと変遷してきています。

 

 

サルコペニアの診断はロコモティブシンドロームよりもより厳格な診断基準があり、

 

 

ヨーロッパの人のサルコペニアの診断基準と、アジア人のサルコペニアの診断基準は若干異なります(*4)。

(体格が異なるので、筋量の低下に関しても地域によって微妙に変わってきます。)

 

 

詳細な診断基準は皆さんの多くにとって必要ないので省略しますが、

 

 

①歩行速度、握力の評価を行い、それらが低下している人に対して

②骨格筋量測定を行った結果筋量が低下している人

①かつ②を満たすとサルコペニアになります。

 

 

サルコペニアの診断で一番の問題点はサルコペニアの診断には当てはまらないけれども

 

 

「予備軍」に入る人たちを拾い上げることが出来ない点です。

 

 

(診断基準ではサルコペニアかそうじゃないかの区別しかできません。例えば、歩行速度が低下していたり、

握力が低下しているが、骨格筋量が低下していない人は正常とは言えませんが、“サルコペニアには該当しない”という事になります。)

 

 

サルコペニアは筋肉の量と質の変化に関して注目している概念で

 

 

ロコモティブシンドロームよりも具体的な診断基準がある反面、診断が面倒であることが分かりますね。

 

 

次にフレイルに移りましょう!

 

 

フレイルはロコモティブシンドローム、サルコペニアを含んだ包括的な概念です。

 

 

イメージとしては

 

 

サルコペニア(筋肉)<ロコモティブシンドローム(運動器)<フレイル(包括的概念)

といった感じです。

 

まずはフレイルの定義から行きましょう。

【フレイルの定義】

Frailty(フレイル) とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡など の転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。(*5フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント、より一部抜粋)

 

ここで注目に値するのは身体的な要因だけでなく、精神心理、および社会的問題も含む概念であると記載されている点です。

 

サルコペニアやロコモティブシンドロームが筋肉や運動器に着目した概念であったのに対して、フレイルは精神・心理的問題及び社会的問題も含めて機能低下を包括的に判断するものになっています。

 

例えば、体が元気であったとしても孤立して社会的に問題を抱えている高齢者は、決して健康な状態で居続けられるわけではありません。

また、体が健康であったとしてもうつや認知症などによる精神的な問題を抱えた場合に体調が急速に悪くなっていくことは容易に想像がつきます。

フレイルとはこうした点に配慮した画期的なものになります。

 

 

では、フレイルの診断基準はどうなっているのでしょうか?

 

【フレイルの診断基準】

そもそもフレイルという概念は、当初身体面に注目し

①体重減少

②筋力低下

③疲労

④歩行速度の低下

⑤身体活動の低下

以上のうち三つ以上を満たす場合を、身体的フレイルと定義したところに端を発しています。(*6 より抜粋)

一つまたは二つのみ満たす場合を“プレフレイル”としてフレイルの前段階と評価します。

 

定義から身体的フレイルはサルコペニアとかなり重なる概念であることが分かると思います。しかし、どの程度から「低下」と評価するかにおいて意見が割れており、現状世界共通の診断基準があるわけではありませんが上記が使用されることが多いです。

 

【身体的フレイル以外のサブタイプ】

①認知的フレイル

現状身体的フレイル以上に統一された概念ではありません。

2013年に国際コンセンサスグループによって暫定的に、認知的フレイルとは「認知症のない高齢者で身体的フレイルとCDRで0.5に相当する認知機能障害が共存する状態」と暫定的に定義されました。

(CDRとはclinical dementia rating の略で認知症の重症度を0点の異常なしから3点の重度認知症の間で評価するスケールです。CDR0.5は軽度認知障害に相当します。)

更に、特定のバイオマーカーを診断基準に入れようとする動きもあり、まだ混沌とした状態です。

しかし、認知的フレイルとは「身体的フレイルがある高齢者においてみられる可逆的な認知機能障害で、適切な対応をしないと要介護状態や認知症に進んでいく危険性が高い状態」としてとらえられており、その位置づけはとても重要です。

 

②社会的フレイル

こちらも認知的フレイル同様、現状統一された概念ではありません。

しかし、独居や外出の機会の減少により人と人との触れ合いが減ることが、新規の要介護認定と関連している事を報告した研究があり(*7)、孤立や孤独の健康に対するマイナスの影響は現在積極的に研究されています。

 

【皆さんが指導出来ること】

ヨガを通じて直接シニアに指導することはサルコペニア、ロコモティブシンドローム、そして身体的フレイルを改善、予防していくことにつながります。

しかし、フレイルは身体的、心理精神的、社会的と包括的に評価するものです。地域のコミュニティで行われている健康体操、ロコモ体操、(呼び方は何であれ)に皆さんが積極的に関わって、そのコミュニティに地域の人の参加を積極的に促していくことは、認知的、社会的フレイルを改善するという意味で非常に重要です。

ヨガインストラクターがスタジオの外に出て地域に溶け込んでいく時代になりました。ヨガスタジオに来てくれる人だけ、来ることが出来る人だけを相手にする時代は終わりました。皆さんの力でフレイルを予防、改善しませんか?

 

【まとめ】

  • ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルは重なる部分が多い概念である。
  • フレイルはロコモティブシンドロームやサルコペニアとは異なり、身体的要因だけでなく、精神心理的側面と社会的側面を含めた包括的概念である。
  • まだまだフレイルは画一的な診断基準がないが、高齢者の心身の不調を可逆的な段階で介入していくという事に対して非常に有益である。
  • ヨガインストラクターは身体的な指導だけでなく、地域の人にコミュニティへの参加を積極的に促すなど、心理社会的側面からの健康改善が出来るようになることを目指すべきである。
  • ヨガインストラクターはヨガスタジオを出て地域に積極的に関わる必要がある時代になった。

 

【引用】 引用順に書いています。

 

  1. 日本整形外科学会HP https://www.joa.or.jp/public/locomo/
  2. 日本整形外科学会によるロコモティブシンドロームリーフレット https://www.joa.or.jp/public/locomo/locomo_pamphlet_2015.pdf
  3. Rosenberg I. Summary comments: epidemiological and methodological problems in determining nutritional status of older persons. Am J Clin Nutr. 1989;50:1231
  4. Chen LK, et al : Sarcopenia in Asia : consensus report of the Asian Working Group for Sarcopenia. J Am Med Dir Assoc 15 : 95―101, 2014
  5. フレイルに関する老年医学界からのステートメントhttps://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf
  6. Fried LP, et al : Frailty in older adults : evidence for a phenotype. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 56 : M146―156, 2001.
  7. Makizako H, Shimada H, Tsutsumimoto K, Lee S, Doi T, Nakakubo S, Hotta R, Suzuki T (2015) Social frailty in community-dwelling older adults as a risk factor for disability. J Am Med Dir Assoc 16:1003.e7–1003.e11