今日はさっそくこんなケースから考えてみましょう。
★ケース★
Aさん44歳女性。子供を二人産んだ後に体重が戻らず、ダイエットのためヨガをやろうと思い、自宅近くのヨガスタジオに足を運んでみました。他の生徒に混ざりレッスンに参加してみましたが、レッスン開始で突然皆が「Om~♪」と始めたので、ものすごいひいてしまいました。
「ヨガって、、ただ身体動かすだけじゃないの?」
目次
ヨガと聞いて中々チャンティングのイメージが最初に湧いてくる人は殆どいないのではないでしょうか?
やはり昨今のヨガブームを考えると、ヨガ=アーサナと考える人が殆どでしょう。
そんな中で、「Om~♪」と集団で言い始めたら途端に宗教色が強くなって倦厭されてしまうこと間違いないのは容易に想像つきます。
それに恥ずかしくないですか人前で「Om~♪」なんて、、しかもOmって何??、、、、、
こうしたデメリットあり、そもそものハードルが高いチャンティングですが、効用に関してはご存知でしょうか?
チャンティングをする習慣が自分になく、人にお勧めする機会がなかったとしても、その効用に関して理解しておくことは非常に意味があることだと思います。
今回はそんなハードルの高いチャンティングの生理学的メリットに関して勉強してみましょう。
それからチャンティングはマントラじゃないとダメなのでしょうか?このあたりも現在わかっている事をお伝えしていきます。
(マントラ??という人はこの記事を読めば理解できると思います。)
声というのはそもそも声帯がこすれあった結果としての波動です。
私達が声を出すと、声の振動は身体を伝わります。耳で音を感知するときはこの身体を伝わる振動(骨伝導)と直接鼓膜から伝わる音の両方を感知しています。
ですから、耳垢がつまっていたり、鼓膜が破れていたとしても、音を感知することが出来るのは骨伝導によります。
この身体を伝わる振動(バイブレーション)のうち、ある特定の振動が心を安定させる作用があると古来より考えられてきました。
そこで、ある特定の振動とはどういったもので、心を安定させるとは具体的にどういった事を示すのか更に詳しく学んでみましょう。
ヨガに限らず、世界中で昔からある特定の言葉の響きに秘められた特別な効果に注目がなされてきました。
そこで、いよいよマントラとは何ぞや?というところから入っていきましょう。
まず、マントラ(mantra)という言葉はサンスクリット語の二つの言葉、manas(心)とtra(道具)が合わさって出来たといわれています。マントラとは文字通り、”心に作用する道具”という意味があります。
マントラを唱えることによって、特別に集中しようとする努力を払うことなく、気持ちを穏やかにし、心の活動を止めることができる、と言われてきました。
マントラはヨガの世界やサンスクリット語に限られたものではありません。
例えば、キリスト教ではJesusを復唱する事、Ave Maria(聖母マリアへの祈り)を復唱すること、またイスラム教ではAllahを復唱することはマントラと同様の効果があると考えられています。
日本でいえばお経全般はマントラと言ってよいのでしょうが、皆さん一度は聞いたことがあるであろう般若心経の最後の方「掲諦,掲諦,波羅掲諦,波羅僧掲諦,菩提娑婆訶」(ぎゃーてーぎゃーて、はーらーぎゃーて、はらそーぎゃーて、ぼーじそわかー)は起源がサンスクリット語の立派なマントラです。(gate gate pāragate pāra-saṃgate bodhi svāhā)(*資料1)
さて、話がそれたのでもとに戻していきますが、マントラと呼ばれるものがヨガをしない人には全くかかわりがない、というものではなく長い歴史のなかで多くの人々の生活に密接にかかわってきたものであることがご理解頂けたと思います。
ヨガの世界ではマントラを唱えることで心を鍛え、集中力を増し、悟りへと誘われるといわれたり、リラックス効果があるとされてきました。
そこで今度は西洋医学的観点からマントラを唱えることが生理学的にどのような影響を及ぼしているのか、現時点で分かっている点に関して学んでみましょう。
健康な成人ボランティア12人に
①何もしない場合
②「Om~」と唱えてもらった場合
③「ssss(シー)」(非鼻音でありOmに比べて振動が少ない音)と唱えてもらった場合
上記3パターンを行ってもらい、脳内の血流がどのように変化するか、及び
をfMRIで検討した研究があります。(*文献2,3)
【①15秒→②15秒→①15秒→③15秒の60秒1サイクルを10サイクル】
結果は、
②のOmと唱えている場合、①の何も唱えない場合と比較して、特定の脳の領域(右扁桃体、両側の島皮質、前帯状回、眼窩前頭皮質、海馬傍回、視床、海馬)に不活化が認められた。③の「ssss(シー)」場合脳の特定領域の活性、不活性共に起こさなかった。
これが意味するところは、
マントラを唱えると大脳辺縁系の不活化を起こし、それがリラックス効果を及ぼしているかもしれない、という事です。鼻音のバイブレーションが重要なポイントとなる可能性があります。
しかし、瞑想(meditation)によっても脳内の同部位が不活化されるという報告もあり、本研究はマントラの効果と瞑想の効果を分離出来ていないので、マントラ自身の効果を検討するには更に工夫が必要になり、それは今後の課題となるところです。
色々と勉強してきた中でマントラを唱えることのメリットが少しお判りいただけたと思います。でも、でも、でも、それでも「Om~♪」のハードルはやっぱり高い!
そう仰る人のために、マントラとマントラ以外を心の中で唱えてリラックス効果を比較した研究を簡単にご紹介しておきましょう。
インドの研究ですが、「Om~♪」と「One」を心の中で唱える事を比較しています。結果は両者ともに心拍数と呼吸回数を何もしない場合に比べて優位に減少させた(リラックス効果)というものでした。(文献4)
こうして考えてみると、特定の行動の効果を説明する事は非常に難しい事がお判りいただけたと思います。
マントラに関しても、
と疑問は尽きません。今後研究が更に進み、こうした点に関してより具体的な事を説明できるようになってくると思います。リラックス法として自分に合うのであれば積極的に取り入れてみる、というオープンな気持ちでいるくらいで良いのではないでしょうか?
【まとめ】
【参考文献】